回天 第1章 プロローグ

人間魚雷回天

兄さんは いつでも お前を見ているぞ

遺書

お父さん

お父さんの鬚は痛かったです

お母さん

情けは人の為ならず

忠範よ最愛の弟よ

日本男子は 御楯となれ 他に残すことなし

和ちゃん

技術情報1

海は私です青い静かな海は常の私 逆巻く涛は怒れる私の顔

敏子

すくすくと伸びよ

兄さんは いつでも お前を見ているぞ

上西 徳英 (福岡県出身18歳)
多聞隊 伊号第366潜水艦 少尉
昭和20年8月11日沖縄海域船団突入 戦死

天を回らし、戦局を逆転させる

技術情報2

 

 太平洋戦争の末期、「天を回らし、戦局を逆転させる」という願いを込めて、人間魚雷「回天」は誕生した。

 これは、魚雷に大量の爆薬を搭載し、隊員自らが操縦して敵艦に体当たりするという特攻兵器で、隊員の訓練基地が置かれた大津島には、全国から20歳前後の精鋭たちが集まり、毎日厳しい訓練を繰り返していた。そして、窮地に立つ祖国を守るため、多くの若者がここから出撃していったのである。

 今を生きる私たちは、人間魚雷「回天」の史実をここに記し、祖国と愛する者たちのために自らの命をかけた彼らの後世への思いを、永く語り継いでゆかなければならない。