最近は着物やこいのぼりを見かけなくなりましたので家紋を使う事は滅多にありません。お客様の中で本家の家紋が判る方は殆どいらっしゃいません。お墓の中で和型であれば水鉢(写真)・上台・納骨蓋の何れかに家紋を石彫するのが一般的で日本のお墓の文化でもあります。言い換えれば、ご自分の家紋を記しておく唯一の手段ともいえます。江戸末期~明治初期までは自宅の玄関に家紋を記していましたが今では田舎の「蔵」くらいしか見かけません。
八つ割り寄生(ほや)の花
この家紋は「八つ割り寄生(ほや)の花」と言い非常に複雑で石彫職人泣かせの紋様です。家紋が判らない場合の手段として本家のお墓に石彫してあるものを石材店スタッフに見てもらう事が賢明です。その他、長年タンスに仕舞ってある着物(喪服)やこいのぼり・雛人形などに記してある事もあります。
しかし、それらは全て「正しい家紋」とは限りません。昔に記された家紋は当時の技術不足で簡略化され描かれている可能性が高いといえ、特に昔に建立されたお墓に記された家紋の多くは石彫し易く簡略化されています。
現在はサンドブラストという技術を使い、この「八つ割り寄生(ほや)の花」のような複雑な家紋も石彫することが出来ますが、今でも他の家紋に比べ石彫技術が必要ですから職人の人力で石彫していた頃では正確に石彫することは不可能と言えます。それに加え彫りが浅く研磨の技術も現在とは比べようが無く劣化も加わり「何の家紋」か判別出来ない事もしばしばあります。
古い墓地だと隣接するお墓は分家や親戚が多く、それらの家紋で推測し判別する事が出来ます。それから昔の葬儀の写真などをご覧になり「幕」が写っていれば家紋が記されている場合もあります。
お墓に家紋が必要か?
家紋の他、屋号まで入れる方もいますが、そんなに必死に家紋や屋号を探して本当に必要なの?っと思われると思いますが正直、必要でもありません。一般の方はお墓の知識がない為、保守的になり、お墓を建立する際に周りに建立してある他家のお墓を見本に建立する傾向にある為、墓地に行けば似たようなお墓がズラリと並んでいるので、「隣のお墓には家紋があるから家も入れておこう!」的な考えです(最近では洋型のお墓も増え輸入石も使い始めたので墓地も華やかになってきました。)。
特に洋型のお墓には家紋を入れる事は殆どありませんし、和墓に於いても入れない方もおられます。仏教上に於いても家紋は必須ではありません。
また、分家であれば家紋は本家と同じでなくても構いません(宗派も新たに変えても良い)。写真の家紋は家紋帳には無く新たに作った完全オリジナル家紋です。紋様を見れば一目瞭然、「野球」の好きな方が発案された家紋です。
それまで個々一人一人が埋葬されたお墓を明治時代、政府の勧めで家墓に変わりお墓を菩提寺として扱うようになった歴史のある日本のお墓、菩提寺であるなら建立される施主様が自由に造られて結構です。※宗派によっては若干の制約があります。