こんなものも石造
神社などに設置してある「お賽銭箱」一般に目にするのは木造のお賽銭箱ですね。神社などのお賽銭箱は神社の軒(のき)や庇(ひさし)で雨を避けてます。このお賽銭箱は屋外に設置するもので雨避けは一切ありません。注文者は色々思案した結果、石造に至ったっとおっしゃって来店されました。
問題点
軽い返事でご承知致したものの、よく聞けば「お札も入るように」との希望で雨避けは必須条件となりました。そこで上部の入口は避け庇の付いたものに限られる事になり図面を作成。
「待てよ屋外・・?」となれば「ならず者の賽銭泥棒」が頭を過る。鍵を付けなければ。石材は重いので持ち逃げは考え難く鍵さえ付ければ、ならず者も諦めるだろうと。
一石の限界
一石とは一つの石で希望する形の部材を造る事をいいます。メリットは耐久性です。石以外の全ての材料に言える事ですが近年優秀な接着剤であっても鉄などの溶接であっても結合部が先に劣化します。一つの材料で造る事により、その欠点は避ける事が出来ます。しかし簡単な形ですと加工は可能ですが複雑になると精度がかなり落ちてきますし手間がかかる分、高額になってしまいます。
今回のような引き出しが必要な場合などは鍵穴などの位置が少しズレただけでも使い物にならない品物になってしまいます。このような場合は鍵そのものを先に購入し各部の寸法を測って図面に起こします。
思案の結果
難度も図面を作り直した結果、「お賽銭は上から入れるもの」という既成概念から庇の付いた正面からの投入口はボツとしました。「どこから入れるのか判らないようなものは避けたい」との発注者さまからの希望からも一致致しました。幸い日本のお札は上部で少々濡れたくらいでは破れない事が功を奏しました。
一石の問題は一つの部材をなるべく複数面にする事で解決。これも日本製の接着剤は優秀な事で救われました。
あとは、この石の物体が賽銭箱であることが一目で判らなければ意味がありません。そこで正面に「大きく」「お賽銭」と石彫しました。
発注者さまから
「すごいよ!皆さん賽銭箱と判ったようで結構入ってました。」・・。どんな行事や所縁があるものを後世に残す事も人の労力だけでは叶いません。必ず金銭が必要となります。このお賽銭箱が少しでもお役に立てて救われた思いでした。