個人墓と仏石
他のページでも取り上げいますが、明治初期以前は人が亡くなると、その亡くなった人だけのお墓を建立していました。しかも、現在より人の寿命は短く子供や若年者も亡くなる数は多かったのです。故に現在の様に〇〇家之墓ではなく、〇〇家之墓所又は〇〇家之墓地として現在より遥かに面積の多い墓地を所有していました。
写真をご覧いただきたいと思います。左の写真で雑草に埋もれている墓群は全て同じ「家」のお墓です。代々続いてきたお宅です。仏石の大きさも様々で夫婦墓や地蔵墓(子供のお墓)もあります。
時代は変わり人々は農業は辞め都会への会社勤務が当たり前になり、お墓の守も年1~2回に減っていきます。そして大変なのが雑草除去とお墓の数分だけの花芝(お梻)と焼香です。
右の写真を見て下さい。左の写真のお墓を1箇所にまとめたものです。写真では分かり難いかもしれませんが、基礎工事をした上で寄せてありますので傾く心配はありませんし枠内(外柵内)には雑草は生えません。これを「寄せ墓」と呼びます。
こうする事により雑草除去の面積が減り、献花や焼香も1回で済みます。
注意点
これは良い!と思っても即実行とはなりません。以下に注意が必要です。
管理人
該当の墓地の形態は?別ページ「墓地の選び方」でも詳細がありますが、お持ちの墓地の所有者又は管理者が市営等の公営墓地及び寺院墓地であれば、その方々に相談する必要があります。行って良いのか?悪いのか?又、事後、余った墓地をどうするのか(後述)?
地区墓地(村墓地)であれば、管理人が存在するのか確認する必要があり、存在すれば意向を伝える必要があります。
余った墓地
代々の墓地又はお持ちの墓地が比較的狭いのであれば問題はありませんが、寄せ墓を行った事で墓地が余るケースが殆どで、余った墓地の使用権利を継続されるのであれば、雑草などの掃除は引き続き行う必要があります。お墓や墓地の管理を軽減する為に寄せ墓を行うのであれば代々の墓地であっても、「思い切って」手放す事です。但し、そこの立地条件が良いのであれば分家やご親戚に分けてあげることも一考です。その墓地が好条件であれば売買も考えられますすが管理人がおられる墓地であれば譲渡売買が自由であるのかを尋ねる必要があります。
お骨
「お骨」、これが恐らく一番の関心事だと思われます。寄せる前のお墓の下には「お骨」があるのでは?・・。詳しくは「古いお墓の下にはお骨があるのか?」のページで紹介していますのでご覧下さい。
抜魂
宗派や寺院により呼称は異なりますが、一番上の縦長の墓石を仏石(竿石)と言います。お墓はこの仏石に魂や霊が宿っています(浄土真宗及び真宗は仏様が宿る)。この石を移動や廃棄をする場合「抜く(遷仏)」する必要があります。この法要は僧侶に来て頂き読経を行いますのでお勤め料(お布施とお車代)を差し上げる事が必要となります。
又、該当するお墓が複数の場合は僧侶により異なり「個々」全てに行うのか?1回の読経ですべてを済ませるのか様々です。浄土真宗の場合は、その宗派の教えから「何も行わない」僧侶もおられますし、「気になれば行います」と仰る僧侶もおられます。
厳密にいえば、「する」か「しない」かは施主様次第です。「しない」から業者は受けない事はありません。業者はするのであれば「待つ」スケジュールを組みますし「しない」のあれば即刻行うこともあります。
施工費用
当然ではありますが工事代金も必要となります。新たな石材が必要な場合、規模、寄せる墓の数、行う墓地の立地条件により異なり、実際にスタッフが訪れ見積を算出する必要があります。
廃棄
寄せ墓ではなく廃棄する方法も一考です。仏教上では抜魂を終えた石は「タダの石」になるとされてますから、寄せ墓ではなく「墓終い」の際にも抜魂は行います。施主様のお考え次第ですが、古いお墓群は全て廃棄処分し新たに供養塔を建立する方もおられます。当然ですが費用は嵩みますが「ひとつの区切り」として気持ちが安まることもあります。
供養塔の種類は複数あり決まりはありませんが、浄土真宗以外は五輪塔を建立するケースが多いです。特に没後50年を過ぎると追善供養として建立を薦める寺院もあります。江戸以前の武家のお墓はこの五輪塔や宝篋印塔が非常に多く、今でも300年の追善供養として宝篋印塔を建立する方もおられます。
山口県山口市俊龍寺、豊臣秀吉の供養塔五輪塔
広島県廿日市市洞雲寺、陶晴賢之墓 宝篋印塔
陶晴賢は現在の山口県山口市陶出身で周防地区を守護していたが毛利に追われ厳島(宮島)で自刃した。山口県山口市正護寺には分骨塔である宝篋印塔が存在する。